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更新日:2016年5月12日

版木に見る人々の信仰

箟峯寺本堂観音堂を中心とする天台宗の一山寺院であり、現在本山に届を出しているのは18坊に及ぶ。そのうち住職不在の兼務寺院が6坊あり、実質12坊で運営されている。ちなみに最盛期は脇坊や禰宜といった役僧も含めて24坊で構成されていた。

箟峯寺では一山全体としての儀式行事遂行と各坊独自の宗教活動が併存する。

朝廷の勅願寺として建立されて以来、箟峯寺一山総出で奥州鎮護の祈願に勤め、一方では念仏供養や護摩の修法で人々のために祈りを捧げてきた。また、鎌倉・室町期には奥州管領や大崎・葛西の地方豪族から外護を受け、江戸期は仙台藩内10カ所設けられた中の第一の祈願寺として位置づけられ、仙台藩主「お屋形様」の新年の祈祷あるいは病気平癒、雨乞いの祈祷など総員で勤めてきた。

一方、民謡「秋の山唄」に奥州涌谷の箟岳様と唄われるように、奥州一円から作神様と慕われ、1月の白山祭では本堂参詣の後、多くの信者が各宿坊を訪れて賑わいを見せる。その際には内容は異なるが、各坊からお札や烏護符、大黒様や元三大師のお姿などがお守りとして出されている。

大黒様や元三大師

参詣者の信仰、祈願のニーズは実に様々で、その様子は一山各坊所蔵の数多くの版木に見ることができる。版木は文書・図画・図像を木板に刻んだもので、印刷の原版となる。

箟峯寺のご本尊は十一面観音である。平成二十年(二〇〇八)に33年振りの御開帳が行われたが、各坊には同じサイズ・フォルムの十一面観音像の版木が残されている。

版木

江戸期以降各坊ではこぞって独自の版木を作成して信者の要望に応じたのである。

船玉御守護 十二支守り

火防不動尊 取子安全

大漁満足 衆病悉除

転禍為福

独自の版木

更に、種々の経文を唱えることによってその法力に預かろうとする様子も見て取れる。

大般若理趣分経 観音経

仁王般若経 十一面経

金光明最勝王経

経文

なお、一山全ての坊で調査を実施していないので、まだまだ貴重な資料が存在する可能性が残されている。

(涌谷町文化財保護委員:坊城延溟)

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