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更新日:2020年6月30日

箟峯寺本尊胎内経

箟峯寺胎内経

箟峯寺の本尊は十一面観世音菩薩です。三十三年に一度御開帳されています。

本尊の胎内には妙法蓮華経を中心として、ほかに金剛般若経、摩訶摩耶経、円頓章というお経を写経したものが収められていました。妙法蓮華経は全八巻、二十八品(章)からなる大変長いお経です。胎内経の解読の結果、第九から第十五までの全部または一部と第二十五から第二十七までの全部または一部が収められています。年号と人名が記されているものが四巻確認されます。

そのうち二巻は、円頓章の写経の最後に文和二年(一三五三年)六月十七日の日付で、一方には奥州色麻郡の僧の名前があり、もう一巻は山北平賀横手の僧(名前は解読できません)が納経したものです。次の二巻は、観世音菩薩普門品第二十五、一般に観音経として多く読まれているもので、文和二年十月二十五日が左衛門尉景利、十月二十六日は山城守藤原家利が納経しています。以上二巻ずつ同じ筆跡のように見えます。

次に、妙法蓮華経の写経ですが、いずれも同一人による書写で、全巻収めたのではと思われます。ただ、年号、記名等がありませんのではっきりしたことは分かりません。

さらに金剛般若経と摩訶摩耶経(いずれも一部分)はそれぞれ別の筆跡で年号、記名はありません。

現存する胎内経は、縦9cmから12cm程度の幅で全九巻に分けて表具されています。四名の筆跡が確認されますが、特に中世の武士による観音経の写経にはその趣意が記されて、常に戦場に身を置く不安と、本尊に対する熱い信仰が見て取れます。

(涌谷町文化財保護委員:坊城延溟)

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